『あの日のこと』卒業公演

2013年3月27日(水)@市民交流センター ビバホール
雨の音。そして、手紙を書く女生徒。

 予算がなく、ホールを一旦キャンセルしていた卒業公演。しかし、藤代さんの「やりたい」という気持ちで全てがはじまった。
 台本も藤代さんが「書く」という決意を固めていた。

 段取りが悪かったのは否めない。12月の打合会には三原高校のみ参加。津名高校は1年生が「数名参加出来るかなぁ?」という状況。年明けの練習日にも、台本はほとんど完成していなかった。
 けれど、やっぱり想いが強かった。
 参加することになった三原高校、津名高校だけでなく、藤代さんの友人たちも出演することに。学校の枠を越え、洲本高校からも出演してくれた。

久々に集まった4人の部員たち。

 台本が完成したのは2月上旬。それまでは、ずっと読み合わせの日々。潤色をすることになり、潤色稿の脱稿がそれから2週間後。その間も、読み合わせをするだけだった。けれど、その場で藤代さんが「どうしてこの作品を書いたのか」、その想いは伝えられた。
 本格的な練習がはじまったのは、各校の期末考査開け。つまり3月上旬。公演日までは3週間を切っていた。

 不安要素はそれだけではなかった。
 藤代さん自身がキャストを決めるに当たって揺れていた。
 どうしてもキャストが足りないのだ(人数的な意味ではなく)。それまでの読み合わせで、1人足りない事態となっていた。他にも色々声を掛けたりしたそうだが、上手く行かなかったようだ。
 結局、キャストは仮決定していたものの、本番2週間前まで揺れ続けることになる。

北野が語り出す。

 3月に入り、立ち稽古。
 そこからは急展開だった。

 手伝ってくれることになった3年生2人は初舞台。1年生3人のうち1人も初舞台。演劇経験豊富なのは、作・演出の藤代さんと2年生1人だけだった。
 ところが、3年生の2人は演技が上手かった。たった1、2年の人生経験の差だが、ここまで違うのか?というほど。そして、1年生の2人も急成長を見せる。熱い空間となっていく部室。

 しかし、期待していた2年生が結果を見せてくれない。演じられない。苦しい展開に。

北野と4人。

 ひょんなことから、OBの大濱くんも部室へ通い出した。みんなの想いが一つになり始めた。
 厳しい言葉も飛ぶ。特に最後の1週間は、それまで見えていなかったこの作品の深みの様なものが一瞬、見え始めたこともあった。そんな深みに気づき、演じ られず苦しむシーンもあった。たったひと言のセリフが言えないのだ(そう、それがとても難しい)。良い意味の苦しさ。

 本番も、……結局、苦しかった。これは悪い意味。
 期待した2年生が、結局、何も変わらなかった。

 最初は乗り気でなかった1年生たちも、そして友情出演の3年生たちも、それぞれが変わっていった。それは、藤代さんの想いを受け止めたこともある。深みの苦しさの向こうにあるものに気付いたこともあるだろう。

 「良い公演だった」と言うのは簡単だ。
 実際、私もそう思う。打ち上げでほとんどの者たちは、本気で舞台に向かった顔をしていた。
 けれど、純粋に良い公演だったかは疑問だ。2年生の彼女は周りを見ずに、自分だけを見てしまったのだから。彼女には、それを乗り越える努力をして欲しいと願う。人の想いは大事だし、そうしなければ、本当の意味で演劇は見えてこないと私は思う。

 良いお芝居は「良かったね」だけでは決して終わらない。
 そこには必ず悔いがある。その悔いこそが、次に向かう何かになる。そうして人は成長していく。

 翌日──。
 部室で後片付けをする彼らの姿。それを見て急激な淋しさが私を襲っていた。

あの日のこと

  • CAST
    • 小山今日子
    • 平井美織
    • 2年
    • 北野 恵
    • 中尾沙柚
    • 3年
    • 内田 健
    • 泉 博貴
    • 3年
    • 立花 南
    • 〆田京香
    • 1年
    • 林 亮司
    • 木本 新
    • 1年
    • 中川竜城
    • 奥田敏史
    • 1年
    • 女生徒
    • 藤代明香
    • 3年
  • STAFF
    • 作・演出
    • 藤代明香
    • 潤色
    • 鈴木 遊
    • OB
    • 舞台監督
    • 稲永博和
    • 顧問
    • 照明
    • 喜田祥隆
    • 2年
    • 音響
    • 桃井新斗
    • 1年
    • アナウンス
    • 泉 博貴
    • サポート
    • 大浜直希
    • OB
    • 制作
    • 藤代明香
      泉 博貴
      中尾沙柚

    •  
       
    • 制作協力
    • 村瀬江美
      宮下貴江
    • 3年
      3年
  • :助っ人
  • :洲本高校
  • :津名高校
  • :淡路三原高校
STORY

 3学期。放送部の部室。そこへ集まってきた、引退した3年生たち。
 その場にやって来た別の3年生の北野。彼女は、写真を探しに来たのだという。彼女の両親が、ここの放送部の部員だったのだと。
 北野が放送部の部室へ来た本当の目的は──?
 受験、進路、将来、不安、希望……。

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