『MIYOKO MY LOVE』の思い出
大阪の金蘭会高校が『MIYOKO MY LOVE』を再演するらしい。
『MIYOKO MY LOVE』は、1997年の近畿大会で上演された作品だ。
まだ私が演劇部へ入る前──演劇部の顧問のT本先生に、訳もわからず連れ出され行った先が尼崎のピッコロシアター大ホールだった。兵庫県代表の県立芦屋高校『花に水をあげましょう』が照明の参考になるから、と。私は、淡路支部大会で助っ人として照明オペのお手伝いをしたのだった。
いま手元に当時のパンフがあるので、金蘭会高校のページから引用したいと思う。
クラブ紹介
いつも元気とやる気だけが取り得の私達は、ノートを傍らに今日もかかさず、腰痛体操をしている顧問山本篤先生を筆頭に、身振り・手振りで言葉を伝えようとする部長、大・小コンビでしっかり者の副部長、財布の中は凍えそうでも心はHOTな会計、本番直前になると、“1日24時間じゃ足りない!”と1秒たりとも時間をムダにしない情報宣伝部、カゼをひいている部員達に、まるでナースのごとく検温しにまわる環境衛生……と受験とクラブの両立で頑張っている3年生20名、個性あふれる2年生8名、元気いっぱいの1年生17名、と計45名で成り立っています。
今回私達は、府大会で最優秀賞、創作脚本賞、個人演技賞を受賞し、この近畿大会の舞台に立てることとなり、部員一同心から喜んでいます。私達の持ち前のPOWER & PASSIONで、『今』に対する心の叫び、そして8月末から取り組んで来たこの芝居作りに込めてきた私達の思いを一瞬一瞬に刻み込めるよう精一杯頑張りますので、よろしくお願いします。
その日、11月22日(土)に上演された作品は、どれも印象的だった。
その後、何度も近畿大会へは足を運んだが、これほどまで幅広く、そして同時にレベルの高い作品が揃っていた大会は、なかった。
正直、大阪代表校の作品は、好みではなかった。この日は金蘭会ともう一校、追手門学院の作品が上演されたのだ。
どちらもドロドロで、もう遠慮したいのにさせてもらえず、強制的にお代わりを注がれ続ける。そんなコテコテに濃い作品だった。爽快だった兵庫代表の県立芦屋とは対照的に。
ただ、この『MIYOKO MY LOVE』の衝撃は凄かった!
正直、“高校生がここまでやるのか!!”と思った。問題作といえば問題作。それも、女子校。(当時高校生だった私の感覚として)女の子たちが演じるような作品ではなかった。おそらく淡路支部で上演しようものなら、各所より批判が来るのではないか?それ以前に顧問の先生が、壁をつくってしまうかも知れない。でもそれらを、“POWER & PASSION”で乗り切った作品と言うべきか。
以前、県立伊丹のG先生が金蘭会のことを「恐怖の金蘭会」と表現したが、その通り。パワー全開で舞台に向かい、独自の世界観で表現する。もう一昨年になるが、2015年の近畿大会で作品を観たときも、それは変わっていなかった。
私が高校生の演じる演劇を“高校演劇”というカテゴリーに括らなかったのは、まず最初にこの作品に出会ったからとも言える。
高校演劇にタブーも不可能もない。自由なものだ。
再演とはいえ、オリジナルは20年前だ。演じるメンバーは違う。
もしかすると、台本も変更されているかも知れない。あの問題のシーンも存在しないかも知れない。当然、演出はまったく違うのだろう。
唯一、顧問の先生は、今も昔も変わっていない様子(2015年時点では、変わっていなかった)。
「生きる」ことにしっかりと向きあう為にみんなで取り組んできたこの作品。今が失ったもの、今が捨て去ってきたもの、そしていつの時代にも変わらないみずみずしい意欲にささやかな亀裂、諍い…………生きるひたむきさが哀しみを生む時、時代のどこかが激しく身をよじらせる、あたかも1人ぼっちの怪獣のように……。
20年前の作品。けれど、今の時代にも色褪せない普遍性を持っていると思うのです。
決して気持ちの良い作品ではないけれど、気になる方は観ておいた方がいいかも?
2017年1月14日(土)に池田市民文化会館小ホールで行われる『第16回 大阪高校生演劇フェスティバル』で再演されます。