演劇の面白さ
演劇の面白さは日常の中に転がっている。
なぜなら私が演劇で面白さを感じるのは、人間に関わることが多いからだ。
演劇には、映画やテレビドラマにはない人間の奥行きを感じさせる要素がある。映画やテレビドラマは、カメラワークにより観客の視点が限定されてしまう。監督の意図通りに切り取られた映像。一方で演劇の場合、観客はどこを見るのも自由だ。喋り手・聞き手・第三者など演じている役者たちの顔、身体、仕草はもちろん、舞台美術を眺めていてもいい。その重ねられていく空気感の中で、登場人物の人間性がふと見えることがある。
例えば、舞台上で繰り広げられる会話の中で、その人物の内面を想像させられることがある。それは「劇的」と称されるようなドラマティックなものよりも、ほんの些細な日常の一場面に感じることが多い。演じられているのは、学校の片隅でだべってる友達同士の姿だったりする。そこには女性や男性の美しさや儚さが現れていることがある。
演劇は自分の視点や感覚の外側にあるものに気づくことによって、より面白さを増していく。映画やテレビドラマのようにフィクションではあるが、より人間の「生」に近い。
だから、舞台の空気を全身で感じてみて欲しい。その空気に飲み込まれたとき、自分の心がとても無防備になった感じがするはずだ。