平成28年度 淡路支部合同発表会

2016年11月6日(日)@市民交流センター ビバホール

2016年の地区大会

 「兵庫県高等学校演劇研究会 淡路支部合同発表会」というのは、今さら説明するまでもないのだけど、全国大会まで繋がるコンクールの一番最初の地区大会。ここで最優秀賞に選ばれた作品が、次の県大会へ推薦されるわけ。

 今回はそんな淡路支部合同発表会のことを、公演記録として残しておこうと思います。

洲本実業『未来の君へ』

舞台は教室

 舞台に立体感を出すにはどうしたら良いか?

 ひとつの答えは、ミザンス(舞台上の装置や役者の配置)。
 教室が舞台のこの物語。前列に3席、後列に3席、それぞれ少し上下にずらすという工夫はあるのだけど、有効的に働いていない。むしろ、この机の配置が役者の演技を横一列にして、平板なものにしてしまった感がある。
 お芝居はフィクションだから、多少のデフォルメは許される。作品としてリアリティのある教室を描きつつ、演技を妨げない舞台装置。それは、自分たちの作品の空間を立ち上げるということ。

どうやらいじめがあったらしい。

 もうひとつは、台本上のリアリティ。
 それは、ファンタジーはダメっていうことじゃない。ファンタジーであっても、しっかりとした裏付けがなきゃ、観客は納得してくれない。

 いじめで自殺した少女。その少女の人格が分裂して、桜、未来、きぃの3人となっている。その設定自体は面白い。その物語にいかにリアリティを持たせるか。
 それはやっぱり台本を書くにあたって、自分をさらけ出す覚悟じゃないだろうか。

 世の中にはビックリするほど観客の心を突き刺す、高校生によるお芝居がある。その中にはいじめを扱ったものもたくさんある。おそらくそれらは、実体験をさらしている部分がある。誤解を恐れずに、自分たちの考えを観客に問うてる部分が。

淡路三原『りはなを。なはりに。』

焼き芋っ!?

 お芝居にとって大切なのは、観客の心を刺激すること。
 それはつまり、観客の想像力を働かせること。いろんなことを観客に描かせること。だから、演じる側は説明しすぎてはいけない。何でもかんでも説明してしまうことは、観客の想像力を削ぎ、飽きさせてしまう。

 単サスを落として、役者がナレーションをする。このスタイルは、時として有効。だけど、多くの場合はマイナスに作用する。幕開き、ドン前でのナレーションがなければ、どんなに素晴らしい幕開きだったかと、そこが残念。

 最初のナレーションをカットしてしまえば、3本中、最高の幕開きだった。
 ドン帳が上がると、下手前に3基のお墓。そのお墓の存在感。そして、お墓参りに来ている高校生たち。哀しげな音楽。そのシュールさが、“いまからどんな物語がはじまるのだろう”と期待感を盛り上げる。
 正直、そんな幕開きをやってのけたのは、この作品だけ。

ラストシーン

 台本のタイトルも、もう少し考えた方が良い。この作品にはミスマッチな気がする。

 優里と優菜という双子の女の子。タイトルを漢字にすると『里は菜を。菜は里に。』ということらしい。死んだのは本当は誰だったのか?という謎解きものになってしまうが、この作品が本当に言いたかったのはそうではない気がするのだ。

 人の持っている暗黒面、ダークサイドをどれだけ掘り起こせるか。そして、それをどれだけ見せつけられるか。
 自分の書こうとしたことを恐れずに、ストレートに表現していたら、凄い作品になっていたんじゃないか?と思わせる。
 そんな可能性を感じたお芝居でした。

津名『わたしを月につれてって』

月明かりの中で……

 おそらくこの作品は、ラストの演奏をやりたくて書かれた台本なのではないかな?と、そう思う。
 そうだとしたら、余計なエピソードが多過ぎだし、もっとストレートに自分たちのやりたいことが表現できたと感じるのです。

 台本を書くときに必要なのは、削ぎ落として鋭くすることと舞台を意識すること。生身の人間が、“舞台”という構造物の上で演じる演劇は、制約が多い。その制約をどう利用するか?というのが、台本を書く上のポイントだし、演出家の腕の見せ所だったりもする。

 この作品の場合は、音楽室という場所だけで、転換なしでやれたんじゃないか?そんな考えが浮かんできてしまう。

ラストの演奏シーン。

 楽器を触ったことのない初心者を含めて、みんなが一致団結して、『Fly Me to the Moon』を演奏しようとする。それだけでもう劇的なドラマが想像できる。
 そして、観客が見たいのは、どんな困難を超えていくのか?ということ。それは衝突であったり、葛藤であったりするのだろう。

 そんな中でも、楽器を演奏する困難さに期待する部分はある。その期待には、十分に応えられなかった。
 練習するシーンを含めて、実際に楽器を演奏するのは、ラストを除けば皆無だったから。

 だったらだったで、ブリッジの音楽をすべて『Fly Me to the Moon』の練習音でつないでも良かったと思うのだ。そこに役者たちのセリフが入っていてもいい。
 作中で表立って語られなかった練習シーン。暗転ごとに少しずつうまくなっていく。と思っていたら、突然、別の感じの音になったりする暗転があったりして、なんて。それは、物語の進行、シーンに合わせて、ということだけど。
 そういう演出の工夫があったら、台本はそのままでも、もっと面白くなった気がするのだなぁ。

演劇を研究すること

 参加校すべてが生徒創作。
 これは単純に凄いことだと思う。それだけの創作意欲があるってこと。

 けれど問題は、どの台本も“何を表現したいのか?”がイマイチ明確でないこと。

 拙くなってしまうのは仕方がない。誰だって最初はそう。
 だから、できるだけ沢山のお芝居を観て、お芝居には何ができるのか?その可能性や表現方法をどんどん研究して吸収していくべきだろう。
 自分の価値観がひっくり返るような、言葉を換えれば心に刃物が突き刺さるような、そんな良いお芝居に出会えるかどうかは運によるところもある。県大会や近畿大会をすべて観ても、確実に出会えるとは言えない。

 だけど──だからこそ、数多くのお芝居を、観る必要はあるのだと思う。

 淡路支部を今後どうしていくか?ということに於いても、いまのままではいけない。
 出来るところから努力して、変えていかないと──!

未来の君へ

  • CAST
    • 岡 千尋
    • 2年
    • 未来
    • 三浦瑠奈
    • 2年
    • きぃ
    • 寺岡鈴音
    • 1年
    • 門脇優斗
    • 2年
    • 女E
    • 上田彩加
    • 1年
    • 女F
    • 中野 萌
    • 1年
    • 女G
    • 森下咲樹
    • 1年
    • 男H
    • 中嶋雪矢
    • 2年
  • STAFF
    • 岡 千尋
    • 演出
    • 演劇部
    • 照明
    • 大上明莉
      中来田きらら
    • 1年
      1年
    • 音響
    • 伊吹史也
      砂川茉由佳
    • 1年
      2年
    • メイク
    • 三浦瑠奈
    • ヘア
    • 國中愛奈
    • 舞台
    • 尾崎瀬都奈

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