『いつかの、夏。』県大会
舞台は幕が上がるまでわからない。
一介の観客として観劇した、金曜日、土曜日の観客席。その感想は、“良いお芝居をすれば近畿大会へ行ける”という確証。
傲慢かもしれないけど、そう感じた。
当初目指していたレベルのお芝居にはなり得ていなかったけど、まだ可能性は残されている。
そして、日曜日。
良いお芝居になるのか、それとも成立しないのか。それが幕開きまでわからない。そんな状態は、今までになかったかもしれません。
実は一番良い舞台ができたのは、10月28日(日)、午前の通し稽古でした。全員のテンション、想いが一致した瞬間。その再現が、その後の練習でも、支部や県での本番でも出なかった。
奇跡の瞬間だとは思わない。ただ、緊張感と芝居への熱意が足らないのは確かだったのです。
だからこそ。
良いお芝居を演じたいからこそ選んだ、苦渋の決断。キャストチェンジ。それは二人の部員が決意したことでした。もう一人を外す、と。
支部大会から1週間。
全員が、その一人の意識とテンションを変えようと時間を費やした。けれど、変わらなかった。
本人が変わろうという努力をしなかった。
本当はみんなで舞台に立ちたいのに。
だから、苦渋の決断。
部外から呼んで、急造のキャスト育成も、1週間では間に合わなかった。もっと時間があれば。
県大会の本番のメンバーは、支部大会と同じ。
ベストな形ではあるが、選び方はベストでなかったはず。客演キャストが何とかなっていたなら、そちらを選んだだろうと思える。
それくらい、そういう事態になっても、その一人は変わらなかった。
結果は優良賞。去年と同じ。けれど、去年と違う。
我々は、去年の自分たちのお芝居に負けた。
目指していた近畿大会は、あっけなく散った。
幕が上がった瞬間、いつもより何故か緊張していたキャスト。観客席にお客さんがいる、このごく当たり前の風景・緊張感に慣れていないからか。
噛み合わないテンションと、空回りする焦り。焦れば焦るほど、演技は綻んでいく。
楽しく演技は出来てるかい?
他校のお芝居と見比べて思うのは、私の書くお芝居は“演技力が要る”ということ。
台詞ではなく、その行間にある想い、つまりはキャラクターの感情。ただ、言葉を言葉として言うのではない。所作の一つ一つにも意味があって、その意味は、自分たちで見つけていかねばならない。
それがわかっただけでもこの県大会は意味があったのか?
もっと良いお芝居ができたはずなのに……。
そんな想いは、次は何に実を結ぶのだろう。
もし、部員たちがそこで何かを掴んだのなら、ここで歩みを止めてはいけない。次へと歩み出さないと。
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いつかの、夏。
CAST
- 芝田 直之
- 松下徹哉
- 2年
- 中川 夏希
- 藤代明香
- 3年
- 川上 沙緒里
- 名田みず穂
- 2年
STAFF
- 作
- 鈴木 遊
- OB
- 演出
- 藤代明香
- 舞台監督
- 松下徹哉
- 舞台監督助手
- 藤代明香
- 照明
- 中島穂波
- 2年助
- 音響
- 森谷友裕
- 3年助
- アナウンス
- 宮下貴江
- 3年助
- 助:助っ人
STORY
2012年8月、夏休み。
ロンドンオリンピック真っ最中。そんなこととは関係ない高校生たち。いつも通り、部室に集まってきて、はじまるのは他愛ない会話。
しばっち、夏希、さおりんの、三人の夏のお話です。
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