『タバコの害について』自主公演
今回の自主公演は、“公演するというのはどういうことか?”を考えさせられた公演かも知れません。
新入部員もなく、3年生の部長ひとりになってしまった演劇部。彼女は、文字通り独りになってしまいました。それは、「助けてくれる人がいない」のではなく、「自分の殻に閉じこもってしまった」ということ。
公演のために検討した台本は数知れず。私が書けなかった創作台本も含め、二転三転しました。最初は、5人芝居。それがいつの間にか3人芝居。そして、2人芝居。遂には1人芝居へ。
この台本に決めた会議で、彼女は周りにこう言ったのです。「これ(3人芝居の台本)は出来ないから、1人芝居にする」と。
どの台本も出来なかったのは、彼女の諦めでした。彼女は誰に対しても「一緒にやって欲しい」と言えなかったのです。
そんな感じで4月、5月、6月という時間を無為にしてしまい、稲永先生より突きつけられた最終宣告。「もう出来ないぞ」。それに対して彼女の出した答えは、「やる」。それが4週間ほど前の出来事。
ところが、練習しない。ともかく、練習しない。ようやく練習がはじまったのは、テストが明けた頃。本番までは、あと2週間。それも、自分ひとりでは、何も出来ない現状。
しかし、彼女は気づいていなかった。
自分では「私は何も出来ない」と言うけれど、そうではないということを。去年の今頃は、必死に練習し、後輩も指導していたことを。それこそひとりの日でも頑張っていた。ある事件が起こるまで。
結論から言えば、気持ちの問題なのだろう。
これは、周りがとやかく言っても仕方がない。自分が気づいて、解決して、乗り越えなければ。
この公演での彼女は、声量も歯切れも演技力も、全て1年生の頃に劣っている。つまり、出来るのだ。出来るのだけれど、出来ない症候群に陥っている。
もう一つ気づくべきは、独りではないということだろう。
彼女が心を開かなかったばっかりに、先輩も友だちも、演劇部室から去っていき、文字通り独りになった感は否めない。かくいう私もそのひとりだ。
何かを変えてみようとしない彼女には、何を言ってものれんに腕押し、糠に釘だったからだ。
そして多くの人は、彼女が何か言うまで待ち、数時間待った挙げ句、何も言わないので疲れ果ててしまっただけだ。
DMが届いたのは、公演3日ほど前だったのだろうか。予想に反し、都合のつくOGたちが来てくれた。他にも観に来たかったOGらはいるらしい。
秋、彼女はコンクールに出ると言っていた。
その為には、彼女自身が変わらなければいけないことがある。いや、思い出さなければならない気持ちと、乗り越えなければならない壁がある。そう言うべきか。
この公演の成否は、彼女がそうなれたのか?にかかっているのだろう。
次の公演で、多くの人に自分の気持ちを伝え、お願いし、自ら練習をする。そういう姿に戻れていたら、この公演にも価値があったと言える。
今はまだ、なんとも言えないのである。
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タバコの害について
CAST
- みー
- 名田みず穂
- 3年
STAFF
- 作
- 浅倉 南
- 演出
- 稲永博和
- 顧問
- 舞台監督
- 桃井新斗
- 2年助
- 照明
- 松下利明
- 3年
- 音響
- 坂上恵子
- 1年助
- 助:助っ人
STORY
少し様子のおかしい演劇部の部室。
そこへ、髭を付け、モーニングを着、男装した女生徒が入ってくる。彼女は、チェーホフの『タバコの害について』を演じ始めた。
果たしてこの部室で、何が始まるのか──?
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